ベスブ石 (べすぶせき、ベスヴ石、Vesuvianite、ベスビアナイト、Idoclase、Idocrase、アイドクレース)

2016年07月04日14:30  は行 写真あり

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 ベスブ石(べすぶせき、ベスヴ石、Vesuvianite、ベスビアナイト、Idoclase、Idocrase、アイドクレース)はベスブ石グループに属するカルシウムとナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄のソロ-ネソ珪酸塩鉱物(正方晶系)( (Ca,Na)19(Al,Mg,Fe)13(SiO4)10(Si2O7)4(OH,F,O)10 )で、弗素と水酸基を含みます。このうちカルシウムとナトリウムは互いに入れ替わり、またアルミニウムとマグネシウム、鉄も互いに入れ替わります。また水酸基と弗素と酸素も互いに入れ替わります。

 スカルン中に典型的に産する鉱物で、接触変成作用を受けて変質した石灰岩中に灰礬柘榴石、珪灰石、透閃石、緑簾石、方解石などと共生します。また、霞石閃長岩などの火成岩中に産するものもあります。

 自形の結晶形は四角錐柱~円柱状で、柱面が発達せず錐面のみのそろばんの玉状(切頂四角両錐形)のものもあります。そしてそれらの集合としての塊状の他、微細な結晶の緻密な塊としても産します。

 色は一般的に黄緑色や褐色で、アルミニウムやマグネシウムに富むものは色が淡く、鉄分が多くなるにしたがって濃色となります。他に紫紅色、青色、緑色のものがあります。

 ベスブ石には含有する元素により多彩な発色を示すことから、様々な別名が付けられています。
 銅を含み青色を呈するものにはシプリン(シプライン、Cyprine)という種名で呼ばれており、ロシア産の緑色種はウィルアイト(Wiluite)という種名で呼ばれています。また、白~黄色を呈するものにはカリフォルナイト(Californite)という別名があります。また、ベスブ石の微細な結晶が緻密に集合した塊で緑色を呈するものはカリフォルニア翡翠(Californian Jade)と呼ばれています。さらに、シベリアのビリュイ川に産する硼素を含んだものにはビリユイ石(Viluite)という別名があります。このうち青色のシプリンと緑色のウィルアイトは独立種として認められていますが、その他のものは正式な鉱物名ではなく、国際鉱物学連合(IMA)のリストには掲載されていません。

 ベスブ石は塩酸によって分解します。

 英名の "Vesuvianite" は、本鉱がイタリアのベスビアス火山(Mt. Vesuvius)の火山弾中に発見されたことにちなみ1795年に命名されました。
 また別名の "Idocrase" は本鉱がさまざまな形に結晶することから、ギリシャ語で「形」を表す "είδος (eidos)" と「混合」を表す "κρασις (krasis)" から命名されました。

英名(IMA List) Vesuvianite
和 名 ベスブ石(べすぶせき)、ベスヴ石
分 類 ソロ珪酸塩 - ネソ珪酸塩
グループ/系列 ベスブ石グループ
結晶系 正方晶系
化学組成 (Ca,Na)19(Al,Mg,Fe)13(SiO4)10(Si2O7)4(OH,F,O)10
モース硬度 6 1/2
比 重 3.32 - 3.43
屈折率 nω = 1.703 - 1.752 nε = 1.700 - 1.746
複屈折性 δ = 0.003 - 0.006
黄緑~褐色(鉄分が多いほど濃色)、紫紅色、青色、緑色
条 痕 白色
光 沢 ガラス光沢、樹脂光沢
劈 開 {110} に不明瞭(2方向)、{100} {001} にかなり不明瞭
断 口 不平坦、亜貝殻状
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